最高裁判所第三小法廷 平成8年(オ)2375号 判決 1998年11月10日
上告人
甲野太郎(仮名)(X)
右訴訟代理人弁護士
原田紀敏
髙木甫
松下宜且
森川憲二
多田徹
被上告人
国(Y1)
右代表者法務大臣
中村正三郎
被上告人
兵庫県(Y2)
右代表者知事
貝原俊民
右両名指定代理人
中村和博
理由
上告代理人原田紀敏、同髙木甫、同松下宜且、同森川憲二、同多田徹の上告理由第一及び第二の一ないし四について
我が国に在留する外国人についての指紋押なつ制度を定めた外国人登録法(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの。以下同じ。)一四条一項が憲法一三条、一四条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判決(最高裁昭和四〇年(あ)第一一八七号同四四年一二月二四日判決・刑集二三巻一二号一六二五頁、最高裁昭和二九年(あ)第二七七七号同三一年一二月二六日判決・刑集一〇巻一二号一七六九頁、最高裁昭和二六年(あ)第三九一一号同三〇年一二月一四日判決・刑集九巻一三号二七五六頁、最高裁昭和三七年(あ)第九二七号同三九年一一月一八日判決・刑集一八巻九号五七九頁)の趣旨に徴して明らかであり(最高裁平成二年(あ)第八四八号同七年一二月一五日第三小法廷判決・刑集四九巻一〇号八四二頁参照)、外国人登録法一四条一項が、所論主張の市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五四年条約第七号)の各規定に違反すると解することもできない(最高裁平成四年(行ツ)第一四〇号同八年二月二二日第一小法廷判決・裁判集民事一七八号二七九頁参照)。また、外国人登録法一四条一項を上告人に対して他の在留外国人と区別することなく適用することが違憲(憲法一三条、一四条)となるものでないことは、当裁判所大法廷判決(前記最高裁昭和三一年一二月二六日、同三〇年一二月一四日各判決、最高裁昭和二五年(あ)第五八六号同二八年五月六日判決・刑集七巻五号九三二頁)の趣旨に徴して明らかであり(最高裁平成六年(あ)第六八七号同九年一一月一七日第一小法廷判決・刑集五一巻一〇号八五五頁参照)、外国人登録法一四条一項を上告人に対して他の在留外国人と区別することなく適用することが、所論主張の前記国際規約の各規定に違反すると解することもできない。右と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。
その余の上告理由について
原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係の下においては、本件の逮捕状の請求及びその発付並びに本件逮捕状による上告人の逮捕に違法があったとはいえないし、逮捕後にされた指紋の採取及び写真の撮影等についても違法があったとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 尾崎行信 裁判官 園部逸夫 千種秀夫 元原利文 金谷利廣)